福島県は全国屈指の酒処です。2024酒造年度(2024年7月〜2025年6月)に製造した日本酒の品質を競う全国品種鑑評会では、3年ぶりに金賞受賞数日本一(通算12度目)となりました。わたしも酒好きの端くれとしては非常に誇らしい気持ちです。しかしながら福島の酒は全国的にはまだまだ周知されていないのも事実です。今回は、福島県の県庁所在地である福島市唯一の酒蔵、金水晶酒造にお邪魔しました。

福島市は福島県の北部にある中核市で、西側に吾妻連峰と安達太良山、東側に阿武隈高地とに挟まれた福島盆地に位置しています。人口269,389人(令和7年8月1日現在)で、かつては桑の栽培が盛んでしたが、現在は桃や梨などフルーツの栽培が盛んで、旬の時期にはフルーツラインと呼ばれる果樹園が続く道が渋滞になるほどです。花見山公園の花々、磐梯吾妻スカイラインの雄大な眺め、そして飯坂・土湯・高湯などの温泉。福島県の行政都市としての役割だけではなく観光の名所でもあります。
金水晶酒造
金水晶酒造(金水晶酒造株式会社)さんは福島市松川町にて1895年創業、130年の歴史をもつ酒蔵です。今回は斎藤美幸会長にお話しを伺い、昨年 福島市荒井へ移転したばかりの金水晶四季の蔵を案内していただきました。
斎藤美幸会長はとにかくパワフル。お酒のことならいくらでも話せると語る。
全盛期で日本全国に約2万蔵あった酒蔵は約1000蔵まで減少。福島市、伊達郡、伊達市においても7蔵から1蔵へ。懐かしくも寂しそうに話す斎藤会長。
金水晶という名は日本酒の美しく清らかに澄んだイメージにぴったりであるが、由来はなんだろうか。明治天皇が福島市松川町の水晶沢の水を美味しいと言ったことから金水晶という酒蔵の名がついたという。現在の金水晶は吾妻連峰から流れる河川、荒川の伏流水が使われている。荒川は15年連続水質日本一。酒造りに良いとされるミネラル分が多く含まれている。ワイン造りと日本酒造りは大きく異なる。

ワインにはぶどうのみを使用するのに対し、日本酒の原材料の80%は水なのだという。それゆえ、水の美味しさと安全性は最重要項目であると。地震により松川の酒蔵での営業が難しくなり、荒川の水を追い求めてこの地に移転したのだそう。金水晶はとにかく地元にこだわる。使われる酒米は福島県オリジナルの酒造好適米「夢の香」「福乃香」を使って丁寧に仕込む。現在の酒蔵は酒造りに適した環境を目指した。工場内の室温は常に5〜7℃に保たれている。
昔から酒造りは寒い季節に行われていた。発酵の進み具合や雑菌を抑えるためだ。年中室温が一定であることで、季節問わず酒造りが行え、季節雇用の必要がない。フォークリフトを動かせるスペースをとり、室内クレーン等を活用することで、年齢性別問わず酒造りに長きにわたり携わることができる。現在の製造所に移転した際に、仕込む量を1/3にまで落とし、ゆっくり丁寧に造る製法に変えた。金水晶は使う原料と造る人を福島にこだわることで福島の良さを伝えている。
まだ暑さが残る取材日。一方作業所内はとてもひんやりしている。発酵する米の甘く芳醇な香りが立ち込めている。嗅覚視覚ときたらもう次は味覚を駆使したい。だが今日の移動手段は自動車だ。晩酌にしよう。迷いに迷って4本を連れて帰った。
ここでは、購入した2種のみ感想を述べたい。
◆ちびもも
【公式の商品説明では:日本酒「金水晶 純米吟醸」をベースに福島県産の桃果汁を加えた、こだわりのリキュール。グラスに注ぐと、まずは甘い桃の香りが優しく包み込んでくれます。口に含むと感じられるのが、シュワッと弾ける微炭酸。日本酒らしいお米の旨味もしっかりと味わえます。桃の甘みと日本酒の風味が見事に調和した一杯です】とのこと。福島市は桃の名産地。県外からの観光のお土産にぴったりだ。桃×日本酒は日本酒ビギナー向けの商品かなと勝手に想像しつつ開栓。桃からすぐに日本酒の香り。斎藤会長によると、砂糖など加えておらず桃本来の甘味だそう。確かに甘くない。ふわっとした桃の味に思いのほかしっかり日本酒。微炭酸ということだが、微々炭酸でお酒の味を邪魔しない。日本酒好きにも満足の1本。夫婦やカップルで食前酒にいただくのもおすすめ。
続いて、取材時期に発売されたばかりだという限定酒
◆金水晶 純米 ひやおろし
【公式の商品説明では:秋の訪れを感じさせる、まろやかな呑み口の純米酒です。】



友人家族とのバーベキューのタイミングで開栓。口に含んだ瞬間から純米酒ならではの重厚感。肉と日本酒の一見ミスマッチそうな組み合わせだが、不思議と酒が進む。焼肉に負けない米の味わい。ラベルの紅葉を眺めながら涼しくなった秋夜の晩酌に飽きの来ない1本。秋刀魚などの秋の味覚とも相性が良さそう。
全国的にも働き手不足の時代となり、各企業では若手獲得に頭を悩ませている。福島県では若手世代が首都圏や他県に転出し、どうしたら福島で働いてもらえるか定住してくれるか切実である。しかし金水晶では「若い人が希望して来てくれています。」という。福島産にこだわり、福島に誇りを持って伝統の酒造りを生業にすることを若い世代が担っていく。新協地水も地元を支えてチャレンジし続けていこうと思わせてくれた取材だった。

*新協地水(株) 総務部
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