地域のみなさまと循環型の社会へ

事業を進めて行く中で、2022年4月創業者は不慮の事故に遭ってしまいました。しかし、事業計画は止まることなく創業者の遺志を継ぎ、2022年12月ついに工事が開始されました。創業者がオーダーしていた本場スコットランド製の蒸留機に合わせ建設工事を行ってゆきました。日本と海外との電圧の違い(機器は400V)により、電気工事は困難を極めました。それに加え、創業者は、天鏡蒸溜所に関わる全ての人々の命を守る為、粉じん爆発やアルコールによる火災で万が一にも事故が起きないよう、日本のクラフト蒸留所ではとても珍しい、防爆対応の蒸留所を予定いたしておりました。防爆対応照明の選定、配管や器具の部品の細部にまでこだわり電機機器について徹底して防爆処理を施しました。

天鏡株式会社 創業者 小池 駿介氏
当時は世界的に新型コロナウイルスでのパンデミックで、蒸留機の製造時期そして、船の出航も遅れ、社会全体の影響も受けておりました。設置までの時間を活用し、持続可能な蒸留所であり続ける為、蒸留する為に必要な冷却水は地域に流れる湧水を磐梯町と地元の行政区の皆様のご理解を得て、使わせて頂くことが出来ました。この仕組みは新協地水様に組み立てて頂きました。1時間で45㎥の水を使用する冷却システムを構築。冷却済の水は、もともと流れていた川へ戻すことで、事業者のみが独占するのではなく、自然資源を各関係者が享受し活用することによって、地域の価値を見いだし、その価値を外部へも発信する事ができました。
敷地内に榮川酒造がありますが、日本名水百選である龍ヶ沢湧水の地下水を仕込水として活用いたしております。37年前に新協地水様に掘って頂いた井戸は、ポンプが壊れないくらい素晴らしい軟水(硬度24)です。水を調べた結果少なくとも70年前の磐梯山の雪どけ水である事が分かりました。(新協地水様経由で調べて頂きました)この水を日本酒だけなく、ウイスキーにも仕込水として使わせて頂いております。この地の自然が製品を形作っております。
ウイスキー蒸留で出る麦芽の残り物(ドラフ)と、蒸留廃液は栄養価が高い為、地元磐梯町の牧場様に乳牛の「餌」と「飲み水」として活用頂いております。そして、牛の糞尿は磐梯町役場様の協力により、堆肥ヤードが設置され、そこで堆肥となったものを、地元大麦生産農家様が肥料で使用。収穫された大麦を天鏡蒸溜所が原料として使用させて頂く循環型の仕組みが構築されました。乳牛から出るミルクは、地元乳業様にてチーズ等に加工し販売する取り組みも進めて頂いております。地域の皆様のおかげで天鏡蒸溜所は2023年に竣工し、翌年製造免許を取得、無事に稼働する事ができました。
会津に蒸留所という新たな事業を興したことにより、地域の皆様のお役に立つこと。そしてこの町から世界へ向かい、世界の方々がこの町に興味を持ってくださり、この地域へお越し頂ける取り組みをしてまいる所存でございます。

次回号では… ウイスキー(商品)についてご紹介します。
・こだわりの設備から作り分けられる酒質の説明
・創業者とスコットランドの皆様とのご縁
・会津の伝統文化に関わることの素晴らしさ
・創業者が残してくれたKAZEについて
・天鏡シングルモルトについて
