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私の山紀行 第41回「今年の夏山は、天候不順!」

夏山の魅力は、快晴の空に映える彩鮮やかな高山植物の美しさ、そしてひたすら暑さに耐え、汗まみれで登った山頂から観る雄大な展望だ。市街地と違って頂には、やさしく涼やかな風が吹き、ここにいるだけで大きな達成感が味わえる。ずーっと風景に見入っていても寒さを感じずにゆったりした気持ちでいられるのも夏山の魅力の一つだ。そんな夏山が大好きで福島県内の1500m級の高山には、この時期に登ることが多い。

ここ数年『地球温暖化の影響』が夏山シーズンに大きく影響しているように感じる。登山を始めた頃購入した25年前のガイドブック(1998年6月発行)を久しぶりに開いてみるとすでに『地球温暖化』を予兆したコラムが掲載されていた。『梅雨が明ける7月下旬は最も天候が安定する時期だが、近年は異常気象が多く、梅雨明け10日と言われる晴天が続かなかったりするので、あまりあてにできない』と注意を促していた。さらに今年になって気象の専門家は『地球温暖化の進行は疑いの余地がなく、日本における台風の災害の危険性が年々増加をしている。温暖化に伴い気温の上昇と共に大気中に含まれる水蒸気が増加する。それに伴う激しい積乱雲や豪雨、そして強い台風が増加する』と警告している。2023年の梅雨明けは、東北南部で7月24日だった。数日間は晴れが続いたが、8月8日南鳥島近海で発達中の熱帯低気圧が台風7号になった。その後台風は発達しながら北上、近畿地方を縦断し、お盆期間中の日本列島に大きな影響を及ぼした。

8月11日〜20日まで10日間の連休を取得、後半は久しぶりに山三昧の計画を立てた。日々の天気予報は『晴のち雷雨』市街地が晴れていても、登山口が『土砂降りで雷』の日もあった。結局この間、高い山へ登ることはあきらめて湿原と低山中心の夏山山行とすることにした。この期間2度訪れた雄国沼は、厳冬期を除き何度も訪れている。今回の山紀行を書くに当たり、『雄国沼の成因と開拓史』について詳しい情報をWEBで調べてみた。結果、わかりやすくまとめられた『雄国沼 明るく開かれたカルデラ湖』と題された報文を発見、熟読してみてびっくり。弊社『土と水』49号(2007年1月発行)の『福島県の湧水シリーズ』に掲載されていた内容だった。読者の皆様にも参考にしていただきたく、あらためて掲載する。

1.雄国沼の地形と地質

雄国沼は湖面の標高1089m、最大深さ8m、周囲4.62㎞、面積45haの高原静かな湖です。沼の周囲は多くの頂部を持つ外輪山に囲まれています。この外輪山は猫魔火山から噴出した溶岩流や火砕流、降下スコリア、火砕岩等によって形成されています。雄国沼はこれら外輪山に囲まれた、長径3㎞,短径2㎞のカルデラ中央部西寄りを占めています。沼の南部を中心に周辺約180haが高層湿原で、昭和32年国の天然記念物に指定されました。

2.雄国沼と雄国山麓開拓史

雄国沼から流出するのは、北東に流れる雄子沢だけであり、1888年の裏磐梯の噴火体崩壊以前は、現桧原湖付近で長瀬川に合流していました。安積疎水が建設されるはるか以前、山頂部にある雄国沼に目をつけ、灌漑用水として利用して開墾することを企てた人がいました。旧大塩村の代官を務めていた大塩平左衛門です。1657年から1660年にかけて360mのトンネル(雄国掘抜関)を掘削して、雄子沢に流れていた水を西側喜多方方面に流す工事を完成させました。この工事に当たってはトンネル工事だけでなく、雄国沼の貯水量を増やすため、雄子沢川に堤防を築き沼の面積を3倍に拡張したほか、多くの水路を建設しました。この事業により、雄国新田の6集落が形成され、さらに下流の8集落の水田を潤したとされています。
【福島県湧水シリーズ 谷藤允彦・阿部恵美】

【★雄国沼・猫石(標高1,335m)8月17日(木)晴】

磐梯山の西隣に、猫魔ヶ岳を最高峰(1404m)とする猫魔火山群がある。猫魔火山群に囲まれ雄国沼を中心とした高層湿原は、高山植物と高層湿原の花の宝庫となっている。6月にはレンゲツツジ、7月にはニッコウキスゲの大群落が湿原を覆う。そして雄国沼に至るルートは美しいブナ林で、一年を通して心を癒してくれる。今年の夏休みは台風7号が日本列島を縦断した影響が残り、高い山はいつも厚い雲に覆われていた。快晴の低山と湿原に涼しさを求め『雄子沢から猫石』へのルートで夏山を満喫する。

久しぶりに早起きをして、裏磐梯の国道459号『せせらぎ探勝路入口』駐車場を目指す。花の時期や紅葉の時期だと早朝から賑わいを見せる駐車場だが今は静かだ。準備をして、7時51分にスターとする。登山口からしばらく緩やかな登りが続く。雄子沢のせせらぎを聞き、明るい陽ざしが注ぐ森の中をゆっくり進む。ブナの大木が見られるようになり、森深く入ってきた感覚となる。森は陽ざしを遮る効果があり、市街地では酷暑だがここは携帯温度計で23.3℃,湿度計は85%を示していた。登山道は変化が少ない緩い登りだが、雄国沼が近づくと土質が岩塊混じりロームに変化をして悪路になる。急な斜面を登り植生が灌木帯に変化をすると、一気に空が開ける。左に雄国山分岐を見て、休憩舎に9時5分(1時間14分)に着く。休憩舎からは雄国沼と湿原、外輪山を一望することができる。水面は連日の酷暑で貯水率が低下をし、エゾミソハギの群生地まで沼底を歩いて行くことができた。目的地は『猫石』雄国沼を拡張するために築堤された百閒土手を通り、雄子沢への排出口(今は流れていない)を見て猫魔ヶ岳に繋がる登山道を進む。

雄国沼の北側低地を緩やかに登っていく。猫魔ヶ岳西側斜面には唯一伐採を免れた自然のブナ林が広がっている。どの季節を歩いても美しいと感じる森であり、斜面を削ったV字型の沢を3本渡ることになる。沢を渡るたびに傾斜は急になり土質も岩塊混じりロームになる。

特に3本目の沢を渡り終えると、『猫石まで0.5㎞』の道標があり、暑さと疲れ切った体には堪える急な崖状の登りとなる。土質は依然として岩塊混じりロームで多量の雨水が浸み込み大変滑りやすい。転ばぬよう枝を掴み4輪駆動のように手足を動かし、体を上げていく。相棒との間隔も離れるばかりだ。突然空が開け10時20分(2時間29分)に巨大な石が象徴的な猫石に到着する。

『化け猫が住んでいた』という伝説が残る猫石は、大きな岩塊で展望に優れている。ゆっくり休むことができる岩棚で相棒を待つ間、眼下の雄国沼の眺望を楽しむ。ここからの展望は大変よく、外輪山と雄国沼の全容を観ることができる。今年の雄国沼と高層湿原の全容は、夏の酷暑を忘れさせてくれるひと時となった。また、秋には素晴らしい紅葉を観に来るか・・・・

(行動時間4時間42分・距離12.0㎞)

猫石から雄国沼全容を望む

※新協地水(株)代表取締役

第84号 2023年10月号 表紙
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第2章 4度目の受賞! 福島県優良土木・建築委託業務表彰
第3章 令和5年 新協地水防災訓練について
第4章 2023 夏のTOPICS [新協地水のメディア展開]
第5章 福島県の湧水シリーズ 川内村の湧水を訪ねて・・・ 「坊主清水」「毛戸の清水」
第6章 私の山紀行 第41回「今年の夏山は、天候不順!」
第7章 ふくしまフードフェス日本酒と地物の祭典
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